【自社株買い】株価上昇圧力と下落の危険性

株のお勉強
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企業が株主還元の一環で実施する「自社株買い」。これって実際に何をするか、またどういう効果があるか、みなさんは理解されていますか?


私はなんとなくの理解でした。


自社株買いは株価上昇!と短絡的に考えていたのですが、どうも自社株を買ったあとの行動次第で少し状況が異なるようです。


今回の記事では、自社株買いにより株価がどうなるか、買った自社株がその後どうなるのか、その点をじっくり調べてみました。


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自社株買いでは買った時点で市場からなくなった株式として扱われる

自社株買いとは「自社株」を「買う」という文字通り、企業が自社の株を市場から買い戻すことを言います。


私たち投資家が株式を買うのとは少し性質が異なり、自社株買いで購入した株式はマーケットからなくなったものとして扱われるのがポイントです。

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ここでの理解は「マーケットからなくなったもの」という理解で良いと思います。厳密に見ると、自己株式を消却しなければ完全にはなくなりません。


具体的な例で確認してみます。


自己株式は取得した時点で資本金から差し引かれる

自社株買いで購入した株式は「自己株式」と呼ばれ、企業会計では資本金から差し引くルールになっています。(実際には資本余剰金や利益余剰金を引き当てるため、資本金が減らないことが大半です。)


私たちが買った株式は通常、その企業の自己資本として考えられますが、自己株式は買ったその時点で資本金から減算されます。


具体的な会計ルールは、以下のサイトがわかりやすかったのでそちらで確認してください。

(2) 自己株式の会計・税務 | 山田コンサルティンググループ
資本政策の会計・税務(2019年更新)資本政策とは、会社の目指す資金調達、株主構成および純資産の構成を実現するための施策の総称である。実際に用いられる手法としては、自己株式、新株発行、種類株式、新株予約権、減資、利益剰余金の資本組入れ、株式

ここでのポイントは「取得したタイミングで」というところですね。


実際には自己株式は自社で保有しています。

にも関わらず、取得した時点でマーケットからなくなったものとして扱われるのですね。


自己株式は指標類の計算で除外される

自己株式がマーケットからなかったものとして扱われるのは、企業の業績を測る指標計算でも表れています。

代表的なものとして1株あたり当期純利益(EPS)を見てみます。


EPSは以下の計算式により算出されます。

EPSの計算式

普通株主に帰属する損益 ÷ 発行済株式数の加重平均株式数(自己株式は控除

※IFRS基準。日本会計基準でも同じ。

EPSの計算式では、分母の発行済株式数から自己株式が除外されているのがわかりますね。


自己株式は指標の計算においては不要な項目になるわけです。

これは「市場からなくなった」と同義ですね。


自社株買いは株価上昇圧力を与える

話は変わって、自社株買いがどのような効果があるのかわかりますか?


一般的に言われているのは株価の引き上げ圧力がかかるということです。

その理由としては以下2点が代表的です。

 ✓ 需給バランスが崩れて株価が上昇する

 ✓ EPSの上昇から買いが集まる

需要バランスが崩れて株価が上昇する

株価は市場の需給により決定されています。

市場参加者がその株式を「 買いたいと思う価格」と「売りたいと思う価格」が均衡する価格で株価が確定します。


経済学でいう需要供給曲線の考え方が適用できそうですね。


ここで自社株買いが発生した場合、その株式はマーケットからなかったものとして扱われるため、株式の供給が強制的に減少します。


その結果、需給バランスの崩れから供給曲線が左にシフトし、高い価格でも需給が均衡するようになります。

こうして株価が上昇するのですね。


EPSの上昇から買いが集まる

EPSの計算式は以下となるため、自社株買いはEPSの上昇を引き起こします。

EPSの計算式

普通株主に帰属する損益 ÷ 発行済株式数の加重平均株式数(自己株式は控除

※IFRS基準。日本会計基準でも同じ。

事例を交えて説明します。


利益1億円で発行済株式数が100万株の企業が、自社株買いで20万株を取得したとすると、

自社株買い前のEPS:100円(1億円÷100万株)

自社株買い後のEPS:125円(1億円÷(100万株−20万株))

このように自社株買いによりEPSが上昇します。


EPSが上昇すると、より多くの利益を生んでくれる株式だという判断から、その株式への購買意欲が沸き起こりますよね。

すると株式需要の増加により需要曲線が右シフトし、株価の上昇という流れになります。


買った自社株は消却するか、処分するかによって株価の動きが異なる

自社株買いは株価上昇圧力がかかるため、株主にとってはハッピーな取り組みと言えそうですが、自己株式の扱い次第ではアンハッピーとなることもあります。


自己株式の扱い方法は3通りです。

 ① そのまま保持する(自己株式のまま)

 ② 消却する(消滅させる)

 ③ 処分する(第三者に売却・譲渡する)

①はこれまで説明した通りで、②も自己株式が実際に発行済株式からも除外されるだけなので①と同じです。


問題は③です。


③の場合、折角自社株買いでマーケットからなくなったものとして扱われていた自己株式が、再度株式市場に流通されることになります。


自己株式を処分する場合は自社株買いと反対の事象が起こる

自己株式を処分する目的は①資金調達か②迅速な企業再編と言われていますが、自己株式を処分されることは株主にとってはあまり良くないことです。


それは自己株式の処分により再度市場の株式の供給量が増加することになるからです。


これは自社株買いとは反対の事象を引き起こします。

 ✓ 需給バランスが崩れて株価が下落する

 ✓ EPSの下落から売りが広がる

折角、自社株買いで減った株の供給量が、自己株式の処分により再度増加、元の供給量まで戻ります。


このため需給が再度リバランスされ、供給曲線が右シフト、株価の下落を招くわけですね。


また自社株買いのときとは反対にEPSが低下することから、売り圧力も広がります。


自社株買いの出口が自己株式の処分だと株価の下落を招き、自社株買いへの失望かれさらなる株価の下落もありそうですね。


まとめ

自社株買いは買ったそのタイミングから、株式がマーケットからなくなったものとして扱われるため、株価の上昇が期待できます。


なので、自社株買いに積極的な企業の株はぜひとも狙っていくべきですが、自社株買いで買った株式をその後どのように扱うかという点も合わせてみるべきと思います。


最終的に消却するのか処分するのかによって株価の動きが異なるからです。


自社株買いに積極的なのにも関わらず、自己株式の処分にも積極的だとすると、せっかくの自社株買いも効果がなくなりますからね。


今回は自社株買いだけを見るのではなく、その後の自己株式の行方についてもよく観察するべきということが勉強になりました。

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